真実が書き替えられたら

今日は最近読んだ本の話でも。

ジョージ・オーウェル『1984年』。

ビッグブラザーなる権力を持った「党」が個人を完全に監視し、異端者は拷問にかけられる世界を描いたものだった。この世界では一党独裁となっているようで「党=国家権力」と見なしてよさそう。

この党が個人を監視するのに用いられるのがテレスクリーンと呼ばれる、テレビのような監視装置。映像を流すことに加え、観ている「こちら」側の様子をカメラのように捉える、相互に送受信できるという架空の監視装置だ。

また党は過去をいとも簡単に塗り替える。自分達に都合の悪い情報は書き換えられるのだ。

考えてみれば僕達も学校で歴史を習うわけだけど、それが正しいという保障は何処にもない。習うこと自体は正しいかもしれないけど、何を教え、何を教えないかは完全に権力で決められている。日々接するニュースだってそう。NHKだから、ネットだから、枝野の発表だから正しいわけではない。

現実の話は一旦置いておくとして、ビッグブラザーは平気で嘘をつく。嘘をつくだけじゃなく、その嘘を新たな真実にしてしまう。

数年前から敵国Aと戦争をしていたのに、ある日突然AではなくBと戦争していると発表する。そうすると、今までAと戦争していたと書かれていた文書は全て消され、Bと戦争していたと書き替えられるのだ。そうして国民にBと戦争しているのだと植え付ける。
「うそだ!Aと戦争していたのだ!」
と主張すれば異端として目を付けられることになる。

一体オーウェルは何を思ってこんな国家を描いたのだろうか。

単なる社会主義・共産主義に対する反発というより、当時のイギリスの左派に対する反発がオーウェルの心の内にはあったと訳者は解説していた。もともとは貧しい労働者階級を守ろうとする左派だったのに、権力を持った途端、その権力にしがみついて堕落。結局のところ労働者は労働者として永遠に搾取される。その悲しい実態を、オーウェルは受け容れられなかったようだ。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) ジョージ・オーウェル http://t.co/obFlK63

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